「年鑑 日本の広告写真2022 」という本を買いました。
(※A4変型判 288ページ 商品詳細は本ページの一番下)
全体の感想と、掲載されている広告を例にとって、具体的に自分なりの分析をしてみました。
ちなみに、中身の写真は、APA AWARD 2022 公式ページ で中も見られますので参考にされてください。
結論から書くと「買いです!マストです!!」なので、是非実物を手にとって欲しいですし。
(※解説のために解像度の低い画像を数枚だけ引用します)
年鑑 日本の広告写真2022 とは?
・写真をメインにした優れた広告に与えられる「APAアワード」という賞の受賞作品を掲載。
・広告部門の393点、写真部門の491点が掲載。
・「APAアーカイブス」というコーナーで鋤田正義氏の名作17点を掲載。
・各作品のスタッフのクレジットを掲載。
(クレジットが本当はありがたくて、気になったクリエイターさんの他の作品も調べられる!!)
広告写真の今がわかる!
コレ、出版元である玄光社のHPに書いてあったうたい文句なのですが、まさにこの一言に凝縮されてます。
広告部門は「写真を中心にした広告」が大量に掲載されているため、アートディレクター、デザイナー、カメラマン、コピーライター各目線で非常に楽しめます。
へメイクとかスタイリストのクレジットまで書いてあります!
日本でトップの人たちが関わった広告なので、当然ものすごくクオリティが高く、ひとつづつ丁寧に見ていると永遠に楽しめるレベルです。
広告部門
広告部門の作品は広告代理店の人の気持ちになって見るととても楽しいです。
もちろんデザイナー、カメラマン、コピーライターなどなど広告に関わる全ての方の勉強になります。
表紙にも使われている広島PARCOのこの広告について自分なりの感想・分析のようなものを書いてみます。
“こころ”の文字が左上の空の空白部分に来ていてまず目を留める。
次に「ステイ」がモデルさんに躍動的にかぶっていてドキッとさせる。
“たまるか”で勢いをつける。
“!”じゃなくて句点なのが強い意思を感じられて好き。
手書き文字にすることにより、このモデルさんが言ったセリフのような印象をあたえる。
衣装と背景の草原、キャッチコピーが同色系で統一してるのがホントおしゃれ。
(草原が綺麗な緑だと補色として落ち着きすぎるけど、黄色い方にズレているの◎)
空は曇ってるし、あくまで写真はクール系。
文字も微妙にはみ出してる感じとか、写真的にはモデルさんの左足や右手が切れてたり。
他のバージョンも写真だけの作品だったらやらないであろうトリミング。
とにかく躍動感!って感じ。
わくわく感を煽って、背中を押す。
押し付けがましい購買意欲の促進感がない。
モード系のメイクなのに躍動感があったり、暖色系の色使いなのにクールなイメージだったりのギャップがとても好き!
コピーがかなり強い。
コピーが先なのか、写真が先なのか?
普通の仕事の流れだったらコピーが先なはずだけど、どうだろう。
デザイナー的には文字の見切れ具合が絶妙。
偉そうに色々書いたけど、逆立ちしても自分ではこんなの作れない!本当に素晴らしい!!
ずっと想像遊びしてられる。
こんなのが393点も見られます!消化しきれない!(笑)
写真部門
写真部門も、是非実際見て感じて欲しいです!
「写真」と呼べるのか?というものから日常を切り取ったこころがギュッとなるような写真まで本当に多種多様です。
自分にはどうやって撮ったか全く想像つかないものも多いし、よくこんなん思いつくなあとか、美しすぎて技法とかどうでもよくなったり。
圧倒されました…
一例をあげると、金丸重嶺賞を受賞されている若松誠さんという方の2枚組作品
タイトルは「COVID 19-夏に焦がれて」
2枚とも一言キャッチコピーを足すだけで広告が成り立つくらい印象の強い写真。
1枚目は雨の降る中でビニール傘越しに撮られている。
奥にはブランドショップのショウウインドウ、その前をマスクをした女性が傘をさして闊歩している。
そしてピントは自分の傘に合っている。
かなり暗く重たい印象を覚える。
ご本人コメントには「涙」という言葉があるので、雨粒を涙にみたてているのだろうか。
奥が見えにくいジレンマと、梅雨だからもうすぐ夏だなという希望も読みとれる。
2枚めは駅のホームで同じような服装と髪型の女の子(女子高生くらい)が同じような姿勢と角度でスマホで写真を撮っている。
ふたりとももちろんマスク姿。
奥にある海を撮っているのが想像できる。
これも、息苦しい今と希望が同居している。
僕がコメントするのはおこがましいけど、この写真は構図が完璧すぎる。
「何がどこに何割」とかじゃなくて、とにかくパッとみてインパクトがすごい。
絶対目が留まる。
自分なりに受け止めた感想を書いてみたけど、人それぞれ捉え方は違うはずですので、是非みなさんも写真をみて想像してみてください。
鋤田正義氏の作品アーカイブ
こちらのコーナーはただただ俺得!個人的にとてもツボな写真たち!!
音楽好きでこの方の写真を見たことない人いないのではないでしょうか?
以下のような作品を撮られた世界的なカメラマンです。
・David Bowie / Heroes
・YMO / Solid State Survivor
※上記2枚は誰が写真撮ったとか考えたこともないまま死ぬほど聴いたぞ!!
・シーナ&ザ・ロケッツ / 真空パック
本書には掲載されてませんが、T.REX、忌野清志郎、土屋昌巳などなど
錚々たるメンバーすぎて泣けてきますね。
この本では他にも
・寺山修司 / 書を捨てよ町へ出よう のアートワーク
・ジム・ジャームッシュ / ミステリートレイン のアートワーク
など、本当にカッコよいのです…(感涙)
以下は鋤田氏のドキュメンタリー映画のトレーラー。
お恥ずかしながらまだ見たことないので、僕も見てみます!
まとめ
正直、広告部門も写真部門も個人的にはレベル高すぎて「勉強」とか「参考」にすらならない部分もある(笑)
いや、実際は「こういうことだよな??」とか考えるだけでも、ものすごく勉強になっているのかも。
図録的だったり、クリエイティブ活動の参考にしたり、単純に刺激を受けたりするには紙媒体で机の近くに置いておきたい一冊。
以上、「年鑑 日本の広告写真2022 」のレビューでした。
最後までごらんいただきありがとうございました。
商品情報
- 発売日: 2022年02月26日頃
- 著者/編集: 公益社団法人日本広告写真家協会
- 出版社: 玄光社
- 発行形態: 単行本
- ページ数: 288p